以前テレビドラマとして実写化された、人気漫画『神の雫』。
主人公が行う『デキャンタージュ』は、作中において非常に印象的に描かれています。
主人公の神崎雫は腕を高く上げて注いでおり、一歩の糸を垂らすように丁寧にデキャンタへと注いでいきます。
まさに神業!
神の雫を読んだことがない方は、これを機に是非読んでみてくださいね。
実際漫画で描かれているような高さからデキャンタージュを行うソムリエはなかなかいないと思います。
今回はそんな『デキャンタージュ』についてお話させていただきます。
デキャンタージュとは?意味や効果、やり方は?
「ワインをデキャンタ(入れ物)に入れ移すこと」がデキャンタージュです。
赤ワインで行われることが多いですが、白ワインで行う場合もあります。
では、なぜわざわざワインボトルから別の入れ物へと移し替えるのでしょうか?
このデキャンタージュを行う意味は、3つあります。
その3つとは下記のとおりです。
②温度を上げる
③空気に触れさせて開かせる
ではひとつずつみていきましょう。
①オリを注がないように移し替える
古酒の場合、瓶の底にオリが沈んでいることがあります。
このオリ(澱)とは、時間の経過によりワイン中の成分が結合して沈殿したものです。
デキャンタージュせずにボトルのままサーヴすると、オリがボトルの中で舞ってしまい、グラスに入ってしまう恐れがあります。
オリを飲んでも体に害はありませんが、ザラザラとした質感があまり好まれません。
そのためデキャンタージュをすることにより、オリはボトルに残したままにします。
この際やり方としては、オリを移さないよう、ワインを刺激しないよう、慎重に低い位置からデキャンタージュします。
※古酒ではなくても、瓶詰前にろ過処理をしていないワインの場合、オリが沈んでいる可能性があります。
②温度を上げる
ワインが冷えすぎていると、香りが閉じている可能性があります。
そのままでは香りが出づらい場合、温度を上げる目的でデキャンタージュします。
ワインの提供温度次第で、感じる味わいは変化しますので、「お客様の好み」「共に召し上がる料理」などを考え、デキャンタージュするべきかどうかをソムリエが判断します。
③空気に触れさせて開かせる
よくスワリング(ワイングラスを持って、回すこと)をしている方を見かけると思います。
わかりやすく言うと、その行為をワイン自体でやろうという事です。
未開栓のワインは、わずかな空気にしか今まで触れておらず、還元状態でゆっくりと熟成を経ています。
出番を今か今かと待ち、息を潜めていたワイン。
それが抜栓され、空気に触れることにより、いろいろな作用が起こります。
急速な熟成とも私は考えています。
けれども未開栓のまま熟成することとはもちろん別物ですので、同じ変化を遂げるわけではありません。
この空気に触れさせるためにデキャンタージュを行う際には、そのワインに少し『固さ』が感じられるかどうかを考えます。
香りや果実味、タンニンの強弱はどうなのか、このワインの理想的な状態なのかを考えます。
『閉じている』と判断した場合、ワインを空気に触れさせて開かせるようにデキャンタージュします。
この場合のやり方として、はワインの質感にもよりますが、そっと注ぐというよりは、比較的大胆に注ぎます。
家でもデキャンタージュをして楽しみたいという方、是非デキャンタを購入してみてください。
最後に
今回お話した『デキャンタージュ』はソムリエにより、否定派、肯定派がいます。
抜栓して徐々に変化を楽しむのが自然であるとの考えもあるからです。
デキャンタージュをして、味のバランスが壊れてしまうワインもあります。
レストランなどでボトルワインを注文すると、デキャンタージュが必要であれば、ソムリエが提案してきます。
言われなくてもお願いすればしていただけると思います。
もし気になるようでしたら、ソムリエに相談してみてくださいね。