ワインには極甘口から辛口まで様々な味わいがあります。
一体どのように造れば甘口になるのでしょうか?
糖分を足しているのでしょうか?
実は糖分を足しているわけではないのです。
今回は甘口ワインについてお話させていただきます。
甘口ワインとは
そのままの意味で、甘口ワインとは甘みが強いワインです。
ワインとは、ブドウ果汁中の糖分が酵母のアルコール発酵によってエチルアルコールに変わったものです。
通常の辛口ワインは、果汁中の糖分をすべて発酵させているため、甘みは残っていません。
しかし辛口ワインであっても、ワインのもつ酸味が乏しい場合、甘口に感じることはあるでしょう。
甘口ワインの製法
甘口ワインには大きく分けて2つの製法があります。
甘口ワインは世界中で造られていますが、多くはこの2つに区分することができます。
製法と聞くと難しいように感じますが、甘口になる原理は簡単ですので、是非チェックしてみてください。
ワインに糖分を足す『補糖』という作業をするワインもありますが、こちらは発酵を促すために行うものです。
ワインに甘みをつけるために行うものではありません。
①発酵を途中で止めて、甘みを残す。
先ほどもお話したように、ワインは果汁中の糖分がエチルアルコールに変わります。
そのため果汁中の糖分が減っていくほど、アルコール度数が上がっていきます。
そこで発酵を途中で止めてあげると、糖分が残った状態のワインが出来上がります。
②甘い果汁を搾り、しっかりと発酵させても甘みが残る。
果汁中の糖分を強くし、すべてをしっかりと発酵させます。
その場合糖分は発酵により減っていきますが、発酵はある程度のアルコール度数になると自然と止まります。
使用する酵母にもよりますが、高アルコール度数の環境下では酵母は活動できなくなってしまうからです。
そのため最後まで発酵させても、元の果汁の糖度が高いため、ワイン中に糖分が残ることになります。
甘口ワインの楽しみ方
甘口ワインは、甘さの程度によっておすすめの楽しむタイミングが異なります。
甘みが強いものは、デザートワインとして食後にデザートと一緒に召し上がるのがおすすめです。
甘さがそれほど強くなく爽やかな甘さのものは、様々なお食事に合わせることができるため、食中でも楽しむことができるでしょう。
様々な甘口ワイン
甘口ワインには様々なものがあります。
どの甘口ワインも、どのようにして高い糖度の果汁を得るかが重要です。
遅摘みワイン
ブドウの完熟を待ち、収穫の時期を遅らせることによって甘みの強い果汁を得る方法です。
ワインにより甘みの度合いは異なります。
ブドウが成熟してからの雨や、雹はブドウにとって致命的ですので、長い期間収穫をせずにいることは非常に高いリスクを伴います。
貴腐ワイン
貴腐菌(ボトリティス シネレア)という菌が完熟ブドウに付くことにより、果皮に穴が開きます。
その穴から果肉の水分が蒸発し、ブドウにはエキス分だけが残った状態になります。
エキス分がだけが残った状態のブドウを搾ることで、あまり果汁は搾れませんが、極上の甘さを持つ果汁を搾ることができます。
成熟途中のブドウに貴腐菌がつくと、ブドウは腐敗してしまいますので、完熟したブドウに菌を繁殖させる必要があります。
貴腐ワインは甘美な味わいが特徴で、甘口ワインで一番高価です。
その貴腐ワインの中でも世界三大貴腐ワインと呼ばれ、甘口ワインの最高峰として高い評価を得ているワインがあるのです。
ソーテルヌ
フランス、ボルドー地方のソーテルヌ地区で造られる甘口ワインです。
ブドウ品種はセミヨンやソーヴィニヨン ブランなどが使用されます。
優良なものは20年の熟成が必要とされ、100年持つとも言われています。
長期熟成を経たソーテルヌはそれだけで至福のデザートのようです。
トロッケン ベーレン アウスレーゼ
ドイツで造られ、様々な基準をクリアし、収穫時の糖度が非常に高いワイン。
貴腐ワインでなくても、過熟により甘みが強いものでも名乗ることができる。
トカイ アスーエッセンシア
ハンガリーで造られる貴腐ワイン。
最低残糖分が180g/Lと強い甘みが特徴です。
最上級品はトカイ ナトゥール エッセンシアで、100%貴腐葡萄を使用した贅沢な甘口ワインです。
アイスワイン
収穫時期を遅らせ、ブドウが凍るまで待ってから収穫する方法です。
通常翌年に収穫が行われます。
水分が凍ったまま搾るので、エキス分を中心に絞ることができます。(濃度が高いものから先に溶けてくるので)
近年人工的にブドウを凍らせて果汁を搾る製法(クリオ エクストラクション)もあるようです。
人工的にアイスワインをつくるということですね。
VDN(ヴァン ドゥ ナチュレ)
ワインの発酵途中にアルコールを添加することによって発酵を途中で止め、甘みを残したワイン。
先ほど製法の①のところで説明したワインですね。
アルコール(主にブランデー)を添加するので、通常の甘口ワインよりもアルコール度数は高くなります。
VDL(ヴァン ド リキュール)
これは他の甘口ワインとは一線を画すものです。
こちらは発酵をさせていないブドウ果汁にアルコールを添加したものです。
甘い果汁とアルコールを混ぜたものということになります。
まるでカクテルような甘口ワインですね。
コスパが最高!おすすめ甘口ワイン3選
コスパが良くておすすめできる甘口ワインを3種類ご紹介します。
是非試してみてくださいね。
ヴィッラ ヨランダ モスカート ダスティ
・地域:ピエモンテ州
・品種:モスカート
北イタリアで造られた、爽やかな微発泡タイプの白ワインです。
ほのかな甘みとマスカットのような香りが特徴的です。
カルム ド リューセック
・地域:ボルドー
・品種:セミヨン主体
世界三大貴腐ワインのひとつ、フランスのソーテルヌで造られた貴腐ワイン。
造りては名門の『シャトー リューセック』です。
シャトーリューセックが造るカジュアルなセカンドワインですので、試してみやすい価格帯となっています。
グラハム ファイン ルビー ポート
・地域:ポルト
・品種:トゥリガナショナルなど
ワインの発酵途中にブランデーを添加し、甘みを残した甘口ワイン。
アルコール度数が高いので酒精強化ワインとも呼ばれています。
こちらはルビーポートと言いまして、赤ワインタイプのポートワインです。
食後にチョコレートとご一緒にお召し上がりください。
最後に
今回は甘口ワインについてお話させていただきました。
ワイン初心者の方は甘口から入ると、嫌な印象を持たずにワインの世界に入れるのではないでしょうか。
フランス料理店やイタリア料理店に行った際、食後にデザートワインを頼むとおしゃれですので、是非頼んでみてくださいね。