ワイン愛好家の方は『フィロキセラ』という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
聞いたことがない方でも大丈夫。
この記事を読めば、ワイン業界にとてつもない被害を与えた『フィロキセラ』について理解することができます。
是非読んでみてくださいね。
フィロキセラ禍とは?原因や対策とその歴史
まず『フィロキセラ』とは、「ぶどう根アブラムシ」のことです。
ただの小さなアブラムシなのです。
でもそのただの小さなアブラムシがどうしてワイン業界に大きな被害を与えたのでしょうか。
ブドウの根を攻撃する
このフィロキセラはブドウの根っこに生息し、ブドウの根っこを攻撃してしまうのです。
攻撃されたブドウは枯れてしまい、見るも無残な姿となってしまいます。
しかしこのフィロキセラ、急に発生してしまうものなのでしょうか?
ではその発生源を見ていきましょう。
フィロキセラの発生
もともと『フィロキセラ』は北米に生息しているアブラムシです。
実はフィロキセラは、北米のブドウの樹とは共生できていたため、特に問題視されていなかったのです。
北米のブドウはフィロキセラへの抵抗を持っていたのです。
そのためフィロキセラの被害は報告されていませんでした。
しかし19世紀初頭から、このアメリカブドウがフランスへ輸入され始めます。
フランスワイン農家の、新しいブドウ品種への挑戦心からでしょうか……
チャレンジ精神は大事ですが、それが仇となってしまいました。
そのアメリカブドウとフィロキセラは一緒にフランスへ渡り、もともとフランスで栽培されていたブドウにフィロキセラは浸食。
被害をもたらしていきます。
フランスで栽培されていたブドウは、ヴィティス ヴィニフェラ種というワイン用のブドウ品種です。
このヴィティス ヴィニフェラ種は美味しいワインになるブドウを実らすことはできるのですが、フィロキセラへの抵抗は持っていません。
今まで存在していなかった脅威への抵抗力があるかどうかなんて、ブドウ農家達にはわかりませんよね。
そのためどんどんブドウの樹は枯れていきます。
なぜ枯れるんだ?と農家の方が樹を引き抜いてみると……そこには大量のフィロキセラです。
そして南仏からフランス全土、イタリア、スペインなどヨーロッパ各地へ被害は広がります。
これが『フィロキセラ禍』です。
その被害は計り知れず、相当な数の栽培農家がブドウの栽培をやめてしまったほどでした……
フィロキセラへの対策
このままではいけないと、フィロキセラに対して様々な対応策が考えられました。
しかしいろいろと試してはみるものの、なかなか結果は出ません。
二硫化炭素を地中にまくことが一番の対策とされましたが、効果はそれほど高くはなく、コストがかさむためあまり実用化はされませんでした。
そこで1874年、モンペリエでのブドウ栽培会議でアンリ ブーシュ氏が発表します。
「ヨーロッパブドウをアメリカブドウ台木に接ぎ木をしよう」
「下半分はアメリカブドウ、上半分はヨーロッパブドウ」、そのようにすることでフィロキセラに対抗しようというのです。
それはヨーロッパブドウと言えるのか?と思ってしまいますが、下半分をアメリカブドウにしても、できる果実はヨーロッパブドウの特徴が反映されるようです。
この対策はうまくいき、今日までこの対策が取られ続けています。
最後に
大きな被害を出したフィロキセラ。
何とかアメリカブドウの台木を使用するということで解決しました。
しかしフィロキセラの新種はどんどん出て来ているようで、この平穏もいつ崩されるのかわかりません。
また再度「フィロキセラによる悪夢」は起こるかもしれません。