「還元臭」という言葉を聞くと、ワイン好きの皆さんはどのような香りを想像するでしょうか?
きっと、腐った卵のような香りを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
しかしそれは還元臭というよりは、硫黄臭なのです。
極端に強いとオフフレーバーとされますが、もちろんブショネとは違います。
今回はそんな硫黄臭について、お話しします。
還元とは?
還元については、皆さん小学生の頃に理科の時間に勉強したのではないでしょうか。
この「還元」を覚えていますか?
酸化⇄還元
酸化とは、酸素に触れることです。
これはなんとなく想像がつくと思います。
そして還元とは、その逆のことを言います。
酸素に触れていない=酸素が足りていない状態のことです。
ひとつ例を出すと、酸化防止剤の使用を控える製法を選択した場合、あまり空気に触れさせないように醸造過程を行うことにより還元状態になります。
シャンパーニュの瓶内二次発酵や、シュールリーなども一種の還元状態(酸素が足りない状態)であり、酵母が自己消化していき、ワインに風味として溶け込んで行きます。
硫黄臭?還元臭?
還元の香りと思っている方が多い腐った卵のような香りは、硫黄化合物の香りです。
この硫黄化合物は酸化の状態でも存在するため、還元臭というのは語弊があります。
そのため還元臭ではなく、硫黄臭という方が正しいのではないでしょうか。
しかし還元的環境下では、硫黄化合物の生成が促されるので、還元臭とも言うことが出来るかもしれませんが。。。
硫黄化合物
代表的な硫黄化合物と言えば、硫化水素が有名です。
この硫化水素は、発酵中に栄養不足などのストレスによって、酵母が生成します。
酵母は、アンモニウムやアミノ酸を窒素源として、アルコール発酵を行なっています。
しかし、この質素源が乏しい場合、硫黄含有アミノ酸を分解して、窒素を得ようとします。
そして分解された結果、硫黄が硫化水素として排出され、硫黄臭の原因となってしまいます。
窒素源が乏しい場合は、リン酸ニアンモニウムを栄養として添加すると、硫黄含有アミノ酸の分解を防ぐことができるようです。
また、この硫化水素からメルカプタン類も生成されると言われています。
メルカプタン類とはチオールとも呼ばれ、キャベツ、ゴム、焼けたゴムなどの香りの原因となります。
メルカプタン類が生成されると厄介であるため、硫酸銅を加えて硫化水素を除去する方法も取られています。
硫黄化合物は悪?
硫黄化合物は悪なのでしょうか?
この硫黄化合物は少量であれば、ワインに複雑性を与えるため、歓迎している生産者がいることは事実です。
しかし、この硫黄化合物の濃度が高い場合、「不快な香り」とする生産者が多いです。
硫黄の香りが強すぎるワインは、少し敬遠したくなりますよね。
ワインの科学を学ぶなら
硫黄臭などワインの科学について学ぶのであれば、ジェイミーグッド著の『新しいワインの科学』がおすすめです。
専門用語が多く少し読みづらさはありますが、当サイトの内容ではすこし物足りないと感じる方にはおすすめできる専門書です。
是非こちらもお試しください。
まとめ
「還元臭」というのは難しいですね。
もし硫黄臭がするワインに出会った場合、スワリング(ワインを入れたグラスを回して、空気に触れさせる)をすることをお勧めします。
軽度な硫黄臭であれば、空気に触れさせるだけで気にならなくなります(^^)/